カテゴリー別アーカイブ: 知的障害

[閑話休題]『愛護』誌にみる優生手術の捉え方と旧優生保護法に基づく強制不妊手術被害者救済への動き

以前、旧優生保護法によって強制不妊手術を受けた人たちの国賠訴訟とそれに斬り込んだ『さぽーと』20185月号の今月の切り抜き優生手術の被害者の救済を」(三瀬修一弁護士・本誌編集委員)の記事を基に、協会と優生学・優生思想・パターナリズムの問題として前編後編の2回に分けて、本組合掲示板ブログで報告した*
その後、いくつかの動きがあり、また協会以外の他の障害福祉団体は過去の検証を行っているので、それらを拾い上げてご紹介したい。

* 但し、アクセス統計を見る限り、他の記事に比べてあまり読まれていないようで少々残念…。 ; ;

『愛護』誌にみる優生手術への評価(追記)

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『みんなのねがい』2018年12月号

全国障害者問題研究会発行の『みんなのねがい』では、2018年10月号から「優生思想の歴史を学ぶ 優生保護法と障害者」というコーナーを設け、船橋秀彦氏(全障研茨城支部)が連載執筆している。その中で、201812月号では「第3回 優生手術と施設運営者」について記され、日本精神薄弱児愛護協会(現・日本知的障害者福祉協会)創設者の面々が施設収容者の断種を容認していたことが論じられている。
以前の本ブログ記事の中で戦前・戦後の『愛護』の記事から、戦前と戦後では捉え方は異なるものの、優生手術を利用者に施すことを推進、とまではいかない場合でも容認していたことを記したが、その際に見逃していた『愛護』誌上の記事論稿もあり、折角なので全文引用したい。 続きを読む

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[日々雑感]国及び地方公共団体の障害者雇用率「水増し」問題を許してはならない!〜知的障害者の雇用義務化を巡る経過と共に〜

今から20年くらい前、日本知的障害者福祉協会の事務局が東京都港区西新橋にあった頃、私は通勤に営団地下鉄丸ノ内線利用し、霞ケ関駅で降りて、事務所まで14~5分の道程を歩いて通っていた。
朝の丸ノ内線の車内では当時の厚生省児童家庭局障害福祉課のW専門官とよく一緒の車両になった。W専門官は『AIGO』(現・『さぽーと』)誌の編集会議にもたまに出席してくださっていたし、厚生省への原稿依頼の際、電話でお話をしていたが、私は、当時は(今も)“ペイペイ”(自虐的に使っているのではなく、かつて面と向かって言われた→詳細はこちらを)だったので、私が「愛護協会」の事務局員だとは気付いてはいなかったようだった。

そして、いつも乗っている車両には、肢装具を身に着け、杖を突いている身体に障害のある女性も乗っていた。丸ノ内線は主要ターミナル駅に停まる為、通勤ラッシュが凄まじく、その女性はさぞ大変だったろうと思う。実際、発車停車でよろけて倒れ、気付いた他の乗客らがシートに座らせたり、私も体を支えてあげた事があった。彼女は私と同じく霞ケ関駅で降りていたようだったが、何処に行くのだろう?何処に勤めているのかな?と気になっていた。
そんなある日、用事があって(当時は…ここ数年来“仕事では”厚労省の合同庁舎に入館したことがない、事情は本ブログの他の記事からご察しください)厚生省の入る中央合同庁舎5号館の高層階行きエレベータに乗ったら、彼女が行き先階ボタンのパネルの前にある丸椅子に座り、乗客の行き先階ボタンを押す係をしていたのだった。彼女は厚生省(?)のエレベーターガールだったのか!と謎が解けたと同時に、中央省庁もこのように障害のある人を雇用しているんだなと思ったものだった。

さて、本題に移る。 続きを読む

[閑話休題]『さぽーと』2018年5月号 今月の切り抜き「優生手術の被害者の救済を」から考える〜協会と優生学・優生思想・パターナリズム〜【後編】

敗戦後、戦前戦中の「産めよ、殖やせよ」人口政策への批判と一転して戦後の人口抑制政策、そして、女性の権利として、日本社会党の衆議院議員の加藤シズエ(女性解放運動家)・福田昌子(女性医師)・太田典礼(男性医師)らが不妊・中絶・避妊の自由を求めて法案を提出し、1948年に「優生保護法」が成立した。
優生保護法が果たして本当に女性のReproductive Health and Rights(生殖の健康と権利)を護る法律だったのかについても批判があるが、国民優生法に代わり誕生した優生保護法は戦前の旧法以上に障害者差別を助長し、彼らの生殖の権利を侵すものであった。

 優生保護法 第1条 この法律は、優生上の見地から不良な子孫の出生を防止するとともに、母性の生命健康を保護することを目的とする。
第2条 この法律で優生手術とは、生殖腺を除去することなしに、生殖を不能にする手術で命令をもつて定めるものをいう。

第4条 医師は、診断の結果、別表に掲げる疾患に罹つていることを確認した場合において、その者に対し、その疾患の遺伝を防止するため優生手術を行うことが公益上必要であると認めるときは、前条の同意を得なくとも、都道府県優生保護委員会に優生手術を行うことの適否に関する審査を申請することができる。 続きを読む

[閑話休題]『さぽーと』2018年5月号 今月の切り抜き「優生手術の被害者の救済を」から考える〜協会と優生学・優生思想・パターナリズム〜【前編】

戦後の1948年に成立した「優生保護法」によって、強制不妊手術を受けた宮城県の知的障害のある女性が国を相手取り1,100万円の損害賠償請求の訴訟を起こし、2018年3月28日に第1回口頭弁論が仙台地裁で行われた。国は請求棄却を求めているが、優生保護法(障害者団体他の運動により1996年に「母体保護法」に改正)による優生手術の違法性を問う初めての訴訟であった。そして、その後、5月17日には優生保護法による不妊手術により優生手術を受けた北海道・宮城県・東京都の被害者が一斉に提訴した。旧優生保護法を巡る国賠訴訟の第2弾である。
わかっているだけで、優生手術の実施件数は、本人の同意によるものが8,516件、優生保護審査会の審査によるものが16,475件だ。「本人の同意」とは言うものの、知的障害・精神障害のある人が、果たして、その手術の意味を本当に理解し、同意していたかは大いに疑問であるし、その他の障害であっても、何のための手術か本人に知らされないまま不妊手術が行われた事例もあるという。このような優生思想に基づく障害者差別・人権侵害を放置した国の不作為は糾弾されて然るべきあり、今後、この動きは全国に広がっていくのは当然のことであろう。

『さぽーと』2018年5月号の今月の切り抜き「優生手術の被害者の救済を」では、旧優生保護法による強制不妊手術を取り上げているので、それに纏わる話題を幾つか記してみたい。
知的障害者福祉の歴史において、優生学・優生思想やパターナリズムとの関係を問うことは避けて通れない道である。そして、日本知的障害者福祉協会(日本精神薄弱児愛護協会)の歴史においても然りである。その当時に対する評価は読者にお任せするとして、当該の知る限り、戦前・戦後の論調を紹介してみたいと思う。 続きを読む

[閑話休題]『さぽーと』2017年11月号 今月の切り抜き「労働契約を結ぶということ」

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『さぽーと』2017年11月号

『さぽーと』2017年11月号の特集は「働き続けるために必要な制度と支援―就労定着支援のあるべき姿とは―」2018年施行の就労定着支援について。就労定着支援の事業の実際は未だ不明な部分がある中で、現状の就労支援事業所や就業・生活支援センターで障害者の就労支援、職場定着に取り組んでいる現場からの報告が中心であったが、一般企業での職場定着や就労生活における支援はさておき、いざ福祉的就労に目を向けてみると暗澹たる気持ちにさせられる事件が起こっている。
昨今の就労継続支援A型事業所で経営難から利用する問題障害者の大量解雇問題である。2017年に入って岡山で224人、香川県で59人、愛知県で69人、埼玉県で53人、そして、最近では広島県で112人の大量解雇だ。

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[閑話休題]『さぽーと』2017年8月号 特集「津久井やまゆり園事件から1年が経過して─障害者の安心・安全を守るために─」を巡って

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『さぽーと』2017年8月号 特集「津久井やまゆり園事件から1年が経過して─障害者の安心・安全を守るために─」

雑誌編集者稼業をしているとゴールデンウィークとお盆休み、年末年始の休みは印刷所や取次も休みになるため、休日があるのは嬉しいことだが、編集作業の日数が減り、タイトスケジュールにいつも頭を悩ませる。8月号は10日に納品・発送となったので、15日前後には全国の読者諸氏の手許に届くだろう。

そんな業界ネタの内輪話は兎も角、津久井やまゆり園での殺傷事件から1年経った。事件については、史上稀に見る凄惨な事件であり、忌むべき出来事であったことは今更説明を要しないだろう。1年が過ぎた今、各障害福祉団体の機関誌では事件を振り返る特集や記事が組まれている。各論者の観点も然る事乍ら、其々の団体の主張や編集方針が伺えて興味深い。
そして、協会でも『さぽーと』2017年8月号で「津久井やまゆり園事件から1年が経過して─障害者の安心・安全を守るために─」として特集を組んだ。津久井やまゆり園は協会の会員施設であり、協会は事業者の団体であることから、編集方針にも団体の特徴がよく表れている様に思う。

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[閑話休題]『さぽーと』2017年7月号 レポート「いのちのバリアフリーをめざして〜すぎなみ障害者人間ドックの挑戦〜」

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『不平等な命−知的障害の人逹の健康調査から−』

日本知的障害福祉連盟(現・日本発達障害連盟)が1998年に発行した、有馬正高先生編集の『不平等な命−知的障害の人逹の健康調査から−』という調査研究報告(三菱財団研究助成「知的障害をもつ人達のライフステージに応じた保険・医療対策のあり方に関する研究」他)を基に編まれた書籍をご存知だろうか。
一般的な生活習慣病である糖尿病や高血圧症、動脈硬化など、障害の有無にかかわらず“平等”に、中高年が罹りやすい病気であるが、知的障害のある人たちの場合、このような日常的な病気であっても、家族が付き添えず診断や治療が困難であったり、また、医療機関から診療を拒否されたりなどの理由で、手遅れになってしまう事例が散見されることから、健常者とは異なる理由で高率に死亡しているのではないか、果たして、知的障害者は健常者と同様に基本的な生存する権利が保障されているのかを目的として、長く障害者医療に携わってきた有馬正高先生らによる調査研究が此書である。
今から20年前の研究報告書であるが、知的障害者は健常者に比して、有意に死亡率が高く、その死因も突然死が多い。また、診療する病院の受け入れ体制への不信や対応する職員の困難さなど、現在でも左程変わってはいないのではないか。
『さぽーと』2017年7月号のレポートでは、そのような十分とは言えない知的障害のある人への検診機会を確保するための民間法人の取り組みが紹介されている。

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