[集会報告]「えっ!! 八王子労政会館がなくなるの?!」第3回集会

img_02018年6月30日(土)、八王子労政会館の存続を求める会主催の「えっ!! 八王子労政会館がなくなるの?!」第3回集会が東京都八王子労政会館・第1会議室で開催された。
東京都は、労働者の福利厚生の場として労政会館が果たしてきた役割は終わったとし、また、八王子労政会館が老朽化していることを理由として東京都国分寺労政会館と共に廃止し、立川市に統廃合・移転するとしている。しかし、現在でも多くの労働組合と市民団体が、地域の活動の場として利用されており、労働情報相談センター(旧・労政事務所)として機能している八王子労政会館の存続を、身近な地域の施設・相談の拠点として存続させようという運動がある。

八王子労政会館の存続を求める会はこれまで定期的に集会を開催し、同時に署名活動を行うなど存続活動に取り組んでいる。この度の集会は労働相談の必要性に関する講演と東京都議会議員の現状報告、そして現在、都内にある他の労政会館利用者・利用団体からのリレートークを行い、八王子労政会館存続を訴えるというものであった。そこで、八王子労政会館の存続を求める会の関係者であり、社会福祉法人同愛会東京事業本部・日の出福祉園の労働組合「ゆにおん同愛会」執行委員長のH氏から要請を受け、東京都南部労政会館を利用する労働組合として発言するために赴いたのだった。

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東京都八王子労政会館

八王子労政会館を訪れるのは初めて。史上最短の梅雨明けの夏空の下、八王子駅から八王子労政会館に向かった。駅から徒歩約5分、八王子市の合同庁舎の側に八王子労政会館があった。かつて訪れたことのある国分寺労政会館も古かったが、確かに八王子労政会館もなかなか昭和な味わいのある歴史を感じさせる佇まいだ。労働相談や労働組合との連携ばかりでなく、勤労者の福利厚生施設としても設置された労政会館らしく、体育館(当日は利用者の皆さんが卓球を楽しんでいた)や食堂(この会の打ち上げ・懇親会はここで開かれた)、大きなホールからサークル室もあった。我が組合がよく利用している南部労政会館は建物としては新しいし綺麗だが、南部労政会館とは一味違う、和気藹々とした楽しそうな雰囲気が八王子労政会館にはあった。

始めに、会の世話人代表の石島淳弁護士からは、東京都は3年後の2021年には八王子労政会館と国分寺労政会館を廃止して立川市に移転させるとしているが、会館老朽化が問題ではなく、労働相談窓口の役割と機能を担ってきた八王子労政会館・労働情報相談センターが八王子地域から消えることを憂慮する基調報告があった。

NPO法人POSSE事務局長の渡辺寛人氏の講演「働き方から考える労働相談窓口の必要性」では、POSSEが取り組んでいる若者のブラックバイト・ブラック企業の労働実態が紹介された。
その業種のほとんどが飲食・小売・塾であるという。しかも、ほとんどが正社員がおらず、アルバイトが労働時間に比して只働きとも言える低賃金で現場責任を担っているらしい。しかも、社会経験や法律の知識がない学生に、経営側に都合のいい“職業倫理”や恫喝、挙げ句の果ては暴力を用いてまで辞めさせない滅茶苦茶な労務管理の手口に怒りと呆れの念が込み上げてくる。尤も、なぜそれほどまでにアルバイトに精を出さなければならないかというと高騰する学費が背景にあるのだが。さて、奨学金という名の学費ローンを抱えつつ、目出度く卒業して、正社員で採用されても次に若者を待ち受けているのはブラック企業の労働者の使い捨て労務管理だ。正社員になっても企業が“使い物”にならないとわかった正社員には仕事干しをして、精神的に追い詰めて、自主退職を迫るなど非人間的な労務管理の実態が紹介された(どこぞの某知的障害福祉全国団体と同じだな…)。
POSSEでは労働相談を通して、労働者としての正当な権利行使を若者達に説いている。まとめとして、労働情報相談センターの相談件数は増えており、地域の公的な相談窓口の必要性を訴えた。

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リレートーク 国分寺労政会館利用者のゆにおん同愛会H執行委員長からの発言

続いて、東京都議会議員の山内れい子氏(東京・生活者ネットワーク)からは、現在の東京都の対応の現状と都財政再建から労政事務所の統廃合が進められた労働施策の沿革が話され、現実的に対抗する為には現状の移転計画を具体的に精査していく必要があるとの報告があった。

リレートークでは、国分寺労政会館利用者の三多摩労連副議長のS氏からは労働相談の増加と深刻化の現状、若者は最低賃金などの情報には興味を示している現実、ゆにおん同愛会執行委員長のH氏からは労政会館の労働問題に関する視聴覚教材の貸し出しなどの利便性の事例を挙げ、東京都には統廃合ではなく、より拡充を!と訴えられた。

南部労政会館利用者として私の発言は以下の通り(折角なのでほぼ全て載せます… ^^;)。

「私達の組合事務所は五反田にありますが、一駅隣の大崎駅至近に南部労政会館があり、定期大会や春季集会、学習会の開催などによく利用しております。
現在の南部労政会館は1999年の大崎駅再開発で建設されたゲートシティ大崎のビル群の中にあり、新しくてきれいで、30〜160名までを収容できる6つの会議室を備えております。私達、地域を拠点とする小さな労働組合にとっては、労働組合であれば優先的に、通常3ヶ月前、大会等だと6ヶ月前から施設予約でき、労働相談情報センター事務所で労働相談や斡旋など労働組合の取り組みや労使双方にとっても労働問題の調整・連携が可能な場であり、また、労働組合活動に関する地域で身近な資料・情報提供の場等々、労働組合、企業、地域の市民団体にとって、とても貴重な場所であり、今となっては少なくなった労働者保護の為の公共施設、謂わば、東京都心部の労働運動・市民活動のための砦とも言えます。

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リレートーク 南部労政会館利用者として東京南部労働者組合から

労政会館の統廃合とは別な問題ではありますが、ご報告させていただきたいことがございます。
一昨年、南部労政会館と同様に品川区の区民集会所を利用してきた私達、南部労組に対して、品川区は団体登録の更新を求め、団体構成員全員の個人名簿の提出と「品川区民以外の利用は認めない」旨の要求をしてきました。事実上の利用制限を課してきたのです。これまでは団体の事務所が品川区にあれば利用できていたにも拘らずです。私達、南部労組の組合員は品川区民だけではありませんし、労働組合の集会の性格上、全都・全国の労働者も参加するものです。
このような個人名簿の提出や区民以外の参加を認めないなどという品川区の対応は、プライバシーの侵害であることも明白な上に、公の施設の利用を妨げてはならないことを規定した地方自治法第244に反する不当なものであり、集会・結社の自由、検閲の禁止、通信の秘密を謳った憲法第21に対する重大な侵害であると私達は捉えています。現在、品川区の区営集会所の利用制限について品川区に情報公開を要求し、利用制限の撤廃を求めて、品川区民・集会所利用者に抗議ビラ配布やアンケート調査を行っております。
これは品川区だけの問題ではなく、区によって対応は異なりますが、公営施設や公園などの公共施設で集会制限・集会禁止の傾向が広がっております。私達、労働組合・市民団体の活動を制限する昨今の不当な行政の対応に対して、私達が断固として声を挙げていかなければ、不断の努力によって保持しなければならない、私達の市民的自由と権利、民主主義が危機に直面することになると感じております。

そのような情勢の中、労働組合や地域の市民団体が利用しやすく、地域の労働相談を担ってきた実績、労働組合活動や市民活動に多くの貢献をしてきた労政会館ですが、かつて労政会館・労政事務所は都内に9箇所あったようですが、2005年に北部労政会館が廃止され、現在労政会館は3箇所になっています。それを統廃合により、さらに縮小させようという東京都の動きは行政として行うべき労働者保護を蔑ろにする行為で、看過できるものではありません。働く人の職場の近く、住んでいる場所の近くにあるという利便性こそが相談機関・公共施設の重要な要素なのです。」

最後に、八王子労連事務局長のN氏から団体署名の呼びかけが行われた。
今日は残念ながら、他にもイベントが重なっていたようで、これまでの集会に比べて少々寂しい参加者数であったようだが、私からの報告は兎も角として、実のある講演や報告、存続を願う参加者の切実な質疑応答が聴かれた。

集会終了後は八王子労政会館1Fの食堂での打ち上げ。これも八王子労政会館ならではである。労働団体の上部組織や行政、市民団体の垣根を超えた人たちと交流することができ、都心部(23区部)しか知らない私にとっては八王子・多摩地区の地域の実情も知ることができて有意義な1日であった。

蛇足御免… 労働情報相談センター・労政会館とは?〜東京都の労働行政の変遷〜

因みに、現在の東京都労政会館は「東京都労政会館設置及び管理に関する条例」に規定されている東京都労働相談情報センター(旧・労政事務所)の附属施設である。
設置当初の労政会館の目的は、
「健全な労使関係の発達と労働問題の啓もう普及を図ることにより、労政行政の円滑な運営と発展を期し、もって産業の復興に寄与するとともに、合わせて勤労者の文化教養ならびに福祉の向上増進に資することを目的とする」
とし、その事業としては、
1.労働問題等の相談および指導
2.労働問題に関する啓もう教育
3.労働問題、産業経済の調査研究
4.会館施設の利用公開
5.勤労者の文化教養向上のため必要な事業
6.勤労者の福利厚生および体育向上のため必要な事業
等とされている*
chuo-roseikaikan1953労政事務所自体は1947年4月に発足しているが、その附属施設として、1953年に最初に出来たのが東京都の中央労政会館(文京区春日町)と、程なくして出来た多摩労政会館(立川市柴崎町)であった。
その後、上記の2会館含めて、区部に6ヶ所(中央・東部・西部・南部・北部・渋谷)、多摩地区に3ヶ所(多摩・三鷹・八王子)に増えている。

労政会館の中核である労政事務所(現・労働情報相談センター)は、元々GHQ民政局の民主化政策の一環として設置され、行政が労働組合結成を呼びかけ後押しした。当時は労使関係といえば、集団的労使関係であったからだろう。東京都内には当初17ヶ所の労政事務所があったという。それにしても、労働組合の組織率が2割を切り、個別労働紛争解決が法制化されている今日では信じられないような話である。
1956年に労政事務所内に労働相談所が設置されて以降、労政事務所の労働相談は重要な役割を担って行くことになる。労働相談業務発足後の年間相談件数は8,590件であったという。「平成」になっての労政事務所全体の労働相談件数は5万数千件前後で**、現在もほぼ横這いである***。しかし、1999年に渋谷労政事務所が廃止され、2004年には最も相談件数の多かった新宿労政事務所も廃止されて、名称も「東京都労働情報相談センター」に変更された。現在の東京都の労働情報相談センターは6ヶ所、労政会館は3ヶ所に縮小されている。

東京都労働情報相談センター事務所別労働相談件数の推移(2009年〜2016年)***

2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年
合 計 55,082 52,196 52,363 52,155 52,684 53,104 51,960 53,019
雇用就業部 558 416 323 162 278 322 335 337
飯田橋 29,717 25,187 21,768 22,673 23,252 23,923 23,871 25,411
大 崎 6,773 7,375 9,470 10,537 10,855 10,852 10,369 9,403
池 袋 6,154 6,015 5,571 4,627 4,066 4,391 4,698 3,853
亀 戸 4,785 5,103 6,690 4,745 4,658 4,686 4,160 4,876
国分寺 4,069 4,234 4,232 5,349 5,416 4,998 4,442 4,910
八王子 3,026 3,866 4,309 4,062 4,159 3,932 4,085 4,229

この様に労働相談の必要性が叫ばれ、労働相談件数が決して減ってはいない今日的状況の中、弱体化している労働組合が本来の機能を発揮して活動しやすく、企業内労働組合結成や一人でも活動可能な一般合同労働組合との連携、労働相談支援態勢の強化、労働問題解決への人的資源の適切な配置****が労働者保護行政=団結行政に求められるのではないかと思うのだが、残念なことに東京都の労働行政は後退を続けているのが現状だ*****

*            『東京都労働局誌 昭和28年』東京都労働局 1953年3月
**            こちらの元都庁職員の方のWeb Siteが興味深い。
***         東京都産業労働局「東京都の労働相談の状況」の統計を参照。
****      本集会で山内れい子議員が指摘していたように、現状、担当職員は労働相談の専門職ではなく、各部署を人事異動で渡り歩く総合職である。
*****   藤倉純夫「東京都における労政事務所の統廃合」/ 女性労働問題研究会(編)『女性労働研究』 No.46 pp.114-117 青木書店 2004年7月

POSSEの渡辺氏の講演から、ブラックバイトやブラック企業が蔓延る現在、労働者の権利に疎い若者が喰い物にされ無い様にリアルに相談できる場所として、そして、公共施設が集会禁止に進む今、労働組合や政治的・社会的諸課題に取り組む市民団体が安価に利用できる場所として、何としても東京都には八王子労政会館の存続を求めたい。

…The end

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